堂々たる王道あんぱん/鹿児島
小春日和の水曜日。
「こんなに晴れた日は外にでなきゃもったいないよ!」
そんな声が聞こえてきた気がしつつ、春が苦手な私はどうもためらっていた。
気づけばお昼を過ぎて、、カーテンの隙間から日差しが差し込んでいる。
「あぁ、もう、わかったよ、行きますとも」
春に急かされながらコートを羽織って外に出る。
「寒っ…」
ポカポカ陽気と思っていたのに冷たい風が強く吹き、家に戻ろうかと思ったけれど、さすがにな〜なんて思いながらそそくさと自転車にまたがる。
「パンでも買いに行くか。」
近くのパン屋さんは近いけれどいつもの通り道からちょっとだけ外れていて、わざわざ行かないとなかなか行かないお店。
お昼を過ぎたお店はお客さんもまばらでパンも半数以上が売り切れていた。
\霧島の天然水を使ったつぶあんたっぷり王道あんぱん/
ちらっと目に入った力強いPOPを一度は無視したものの、
探しにきたあんバターが見当たらない。
押しは強いがこの子にするか。
トングで掴んだあんぱんはずっしりと重たい。
天気のいい春の日に憂鬱な気分の私は、神々しく輝くあんぱんに負けた気がした。
あんぱんの方がよほど堂々としていたから。
家に帰って袋を開けるとふわっといい香りが広がった。
「やっぱり春は外に出ないにかぎるなぁ。」
そんなことを思いながら食べたあんぱんはつぶあんが私好みでちょっと嬉しかった。
堂々としていたあんぱんも半分になったら妙に寂しげな表情を浮かべたのが愛おしくって、ちょっとだけ心が軽くなった。
written by なおこ
0コメント