フランスあんぱん/茨城

「うん、次は年末年始ね」

最後にそう告げ、じゃぁねと実家のドアを閉める。

夏の帰省も今日まで。

セミの鳴き声を全身に浴びながら、団地の3階から階段を降りる。

ふと斜め下、向かいの棟の1階を見ると小さい頃から大好きだったパン屋さん、

ブレドールが見えた。

小学校低学年の頃は毎日のように 「買って」「食べたい」と、わたしも弟もせがるもんだから 、

いつしか我が家では「嬉しいことがあった日」に行けるお店になっていた。


算数のテストで満点がとれたら、水泳で25m泳げたら。 

高学年、中学生、高校生と学年が上がるにつれて家族でパン屋さんに行くことはなくなったけど

家族の誰かに嬉しいことがあった日の翌日は、必ず食卓にあのパン屋さんの袋があった。


私が吹奏楽部のコンクールで優勝した日、 

弟がサッカー部でレギュラーをとった日。 

お母さんが商店街の福引で箱根旅行を当てた翌日に袋があった日は思わず笑っちゃったし。

お父さんが2年の単身赴任を終えて帰ってきた日の翌日は、率先してわたしが買いに走った。 


我が家の「テッパン」はフランスあんぱん。 

ぱりっむっちりのフランスパンで、噛みちぎるくらいの本格ハードパン。 

これに挟まれた甘い粒あんとほんのりのバターが絶妙だった。

そんなことを思い出していたら、階段を降りる足取りも自然とゆっくりになって、

懐かしさと切なさが 一気に喉から鼻へ抜ける感じがした。


「久しぶりに寄ってみようかな、明日の朝ごはんを買いに。」





フランスあんぱん

120円(税別)

ブレドール